2種類の瞬間最大出力測定基準で許容損失を検証する


 この検証は、一般に連続最大出力よりも大きな出力とされる瞬間最大出力の測定では、連続最大出力の測定時よりもアンプの負荷となる実効出力が小さいということを確認するものである。
 瞬間最大出力の測定に使用する信号はバースト波であるが、測定する信号の最大値を測定するバースト部分と、そうではない低レベルなブランク部分の信号との全体を合算した平均値がアンプ出力の負荷の実効出力となり、その出力数値は、連続最大出力のそれと比較してはるかに小さな数値となる。
 なお、前記に「一般に連続最大出力よりも大きな出力とされる瞬間最大出力」とあるが、これはアンプ負荷の小さい瞬間最大出力時に高い電源電圧を維持できる非安定化電源を搭載した機器の特徴的な動作であって、つまり最大出力値は電源電圧に依存することであるが、本件商品の電源は安定化されたスイッチング電源が指定されており、この安定化とは、連続最大出力時でも瞬間最大出力時でも電源電圧が一定していることを意味し、そのことは、連続でも瞬間でもその最大出力値はほとんど変化ぜず一定の結果になる。

バースト1波形の規定
ヤマハPAアンプの規定に準処
クレストファクター: 9dB
実効出力(W)=瞬間最大出力(W) / 8

瞬間最大出力15W時の実効出力は・・・
1.875W(片チャンネル)=15W / 8
バースト波形2の規定
JEITA CP-1301の規定に準処
クレストファクター: 13dB
実効出力(W)=瞬間最大出力(W) / 20

瞬間最大出力15W時の実効出力は・・・
0.75W(片チャンネル)=15W / 20
瞬間最大出力の測定規定
オシロスコープの観測にて バースト波の最終サイクルでクリップしない範囲の最大振幅電圧(Vpp)を得る
瞬間最大出力(W)=E×E / 負荷抵抗(Ω)
(E=最大振幅電圧(Vpp) / 2.82)

瞬間最大出力を15W+15W/4Ωに想定したYDA138の許容損失


バースト波形1の許容損失計算結果
実効出力:1.875W+1.875W/4Ω
許容損失:1.04W
許容温度:91.2℃
バースト波形2の許容損失計算結
実効出力:0.75W+0.75W/4Ω
許容損失:0.67W
許容温度:104.9℃

 バースト波形1および2で規定した瞬間最大出力の実効出力(出力全体を平均化した実際の電力値)は、それぞれ1.875W+1.875W/4Ω0.75W+0.75W/4Ωになり、許容損失はそれぞれ1.04W0.67Wになる。
 この1.04W0.67Wの許容損失のラインは、右図で示すとおり、YDA138データシートにある最大出力10W+10W/8Ωの許容損失である2.07Wラインよりも大きく下回るもので、ほとんど発熱を伴わない動作であることが分かる。
 なお この15W+15W/4Ωの瞬間最大出力波形は大きくクリップしており、実用を前提にしない仮想した出力値であり、実際のFX152J PROでは、前ページの4番目の動画で示したとおり10W+10W/4Ωがクリップしない範囲の瞬間最大出力である。

ノースフラットジャパンの矛盾する最大出力の二つの説明

ブログに掲載された最大出力の釈明 メールで問い合わせた最大出力の回答
 頂いているお問い合わせ内容ですが、YDA138がデータシート上で8Ω負荷で最大10W/ch(ステレオ時)の出力となっているのに、15Wはおかしいのでは無いか?又は、誤記載ではないか?との趣旨でございます。
 結論から申し上げれば、生産前の最終試作段階のアナライザーでの計測で最大出力775.0mVrms(0dB)入力で13.5V時に4Ω負荷で約20W/ch(ステレオ時)、12V時で約17W/chの出力を計測しております。
 実際のところ、データシート通りの設計ですと、ご指摘の通りこのような限界値近くでは出力の安定性も悪く、ヒートシンク無しの基板放熱では熱設計上で苦しいのも事実です。
 そこでFX152J PROでは、設計段階より15W2chのコンセプトを実現すべく、サーマルパッドからの放熱がスムーズに行くよう、グランドデザインに工夫をこらしたり、
出力に合わせた受動部品のチョイスを行い、出力を担保できるかたちで完成し、リリースに至りました。
 弊社のFX-AUDIO-製品は中国の企業とベースモデルを共同開発で製造しております。
 その関係上、最大出力の表記は概ね瞬間最大出力となっており定格出力ではございません。
 *瞬間最大出力は測定条件の規定などなく、海外の規格では20ms出力できれば表記可能となっております。
 とは申しましても、音楽を聴く上でピークが連続する場面もございます。
 そのような20ms以上続く音楽での15W出力は担保されておりますので、ご理解いただければと存じます。また定格出力ではございませんので、連続で15Wを出力し続ける使い方では保護回路が働きます。
 そのことを異常な動作と仰っているようですが、その動作自体は製品仕様となっております。

 ブログの釈明では、瞬間最大出力の表現は一切なく、「実際のところ・・・」で始まる語句のとおり、YDA138の発熱を問題視しその対応の説明に終始しているが、それ自体は発熱を伴う連続出力の状況であって、発熱を伴わない瞬間最大出力が前提にないことは明らかである。
 しかし、問い合わせの回答は瞬間最大出力であると明確に断言し、定格出力(連続出力)を否定するというように、見事に釈明ブログの前言を翻したのである
 このような相反する説明をすること自体が、出力のメカニズムを理解していないという事実を証明しているのであって、要するに、素人しかできない発想がそうさせた結果の ”でたらめ” ということになる。
 そもそも15W+15W/4Ωという出力には、連続であろうが瞬間であろうが、その両方の出力波形はクリップしておよそ18%ものTHD+N(高調波歪)を発生させており、実用になる有効な最大出力とならないのである。


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